心のざわめきを鎮める:DBTマインドフルネススキルが教えてくれた「今ここ」の穏やかさ
感情の波に揺られ、心がざわついていた日々
こんにちは。私は大学3年生の時にDBT(弁証法的行動療法)に出会いました。それまでの私は、常に心のざわめきを感じ、未来への漠然とした不安や、過去の出来事に対する後悔に囚われがちでした。授業中に集中できないことや、友人との会話中に急に気分が落ち込むこともしばしばで、自分の感情の波にどう対処すれば良いのか分からず、ただ流される日々を送っていました。
SNSなどを見ても、みんなが充実しているように見えて、自分だけが「今ここ」を楽しめていないような気がしていました。そんな感情に振り回される自分に疲れ、何とかこの状況を変えたいと願っていました。
DBTとの出会いとマインドフルネスへの第一歩
そんな時、カウンセリングの先生からDBTという治療法があることを教えていただきました。特に、「マインドフルネス」というスキルが、私の心の状態に合うかもしれないと聞き、興味を持ったのがきっかけです。最初は「今ここ」に意識を向けるという言葉を聞いても、具体的にどうすればいいのか全く想像できませんでした。瞑想のようなものだろうか、自分にできるのだろうか、本当に効果があるのだろうかという不安と疑問が入り混じった気持ちで、DBTのスキルグループに参加することを決めました。
「今ここ」に意識を向けるマインドフルネスの実践
DBTのスキルグループで最初に学んだのが、まさにこのマインドフルネススキルでした。マインドフルネスとは、「意図的に、今この瞬間に、評価や判断をせずに注意を向けること」と教わりました。頭の中の思考や感情、身体感覚、周囲の音や香りなどを、良い悪いと判断せずにただ「観察する」練習です。
最初は、数分間目を閉じて呼吸に意識を向けるだけでも、様々な雑念が湧いてきて集中できませんでした。「昨日あった嫌なこと」「今日の課題のこと」「将来への不安」など、心の声が次から次へと浮かんできました。そんな自分に「また集中できていない」とイライラすることもありました。
しかし、グループの中で「雑念が湧くのは自然なこと」「それを評価せず、ただ『雑念が湧いているな』と気づいて、そっと呼吸に意識を戻せば良い」と教わり、少し肩の力が抜けました。完璧を目指すのではなく、ただ実践を続けることが大切だと感じました。
具体的に行ったのは、例えば以下のような練習です。
- 呼吸に意識を向けるマインドフルネス: 椅子に座り、目を閉じるか半眼で、自分の呼吸が出入りする感覚に注意を向けます。お腹の膨らみや縮み、鼻を通る空気の温度などを感じます。
- 五感を使ったマインドフルネス: 一つ一つの感覚に意識を向けます。例えば、お茶を飲む時、「お茶の色」「カップの温かさ」「香りの変化」「口に含んだ時の温度、舌触り、味」といった要素を、一つずつ丁寧に感じ取ります。
- 「今ここ」を観察するマインドフルネス: 散歩中に、聞こえる音、風の感触、空の色、足の裏の感覚など、あらゆるものを意識的に観察します。
これらのスキルを日常生活の中に意識的に取り入れるようにしました。最初は無理やりやっている感覚でしたが、少しずつ「今」に集中できる時間が増えていきました。
マインドフルネスがもたらした心の変化
マインドフルネスを継続することで、私の心には想像以上の変化が訪れました。
まず、感情の波に巻き込まれにくくなったことです。以前は、少し嫌なことがあると、その感情に飲み込まれてしまい、気分が一日中沈んでしまうことがありました。しかし、マインドフルネスを実践するうちに、「今、自分は怒りを感じているな」「不安な気持ちが湧いてきているな」と、一歩引いて自分の感情を客観的に観察できるようになりました。感情そのものがなくなるわけではありませんが、それに囚われ続けることが減り、感情との間に少し距離が持てるようになった感覚です。
また、衝動的な行動が減ったことも大きな変化です。感情に突き動かされてSNSを延々と見てしまったり、必要のないものを買ってしまったりすることがありましたが、感情を観察する習慣ができたことで、行動に移す前に一瞬立ち止まり、「これは本当に今、必要なことだろうか?」と考えることができるようになりました。
そして何よりも、自己批判が和らぎ、自分を受け入れられるようになったことが私にとって最も大きな変化です。完璧ではない自分、失敗することもある自分を、以前よりも肯定的に捉えられるようになりました。「今ここ」に意識を向けることで、過去の後悔や未来への不安ではなく、目の前にある小さな幸せや穏やかさに気づけるようになったのです。
例えば、朝、窓から差し込む光の暖かさや、コーヒーの香り、友人と何気なく交わす会話の楽しさなど、以前は見過ごしていた日常のささやかな瞬間に、心が穏やかになるのを感じます。
継続の難しさと工夫
もちろん、毎日マインドフルネスを完璧に実践できるわけではありませんでした。忙しい日や気分が落ち込んでいる日は、どうしても意識が「今ここ」から離れてしまいがちです。そんな時は自分を責めるのではなく、「今日はできなかったけど、また明日からやってみよう」と、自分に優しく接することを心がけました。
短時間でも良いので、毎日の習慣にすること。ガイド音声アプリを活用したり、散歩中に意識的に周りを観察する時間を設けたりと、自分に合った方法を見つけることが継続の鍵だと感じています。
読者の皆さんへ:焦らず、自分に合ったペースで
DBTのマインドフルネススキルは、私にとって心のざわめきを鎮め、「今ここ」の穏やかさを教えてくれる大切なツールとなりました。感情の波に揺られがちな日々の中で、自分自身の心を整える力を育むことができると実感しています。
もし、あなたも私と同じように心のざわめきを感じていたり、漠然とした不安を抱えていたりするなら、マインドフルネスを試してみてはいかがでしょうか。焦らず、完璧を目指さず、まずは数分間、自分の呼吸や身体の感覚に意識を向けることから始めてみてください。
この体験談が、DBTに関心を持つ皆さんにとって、一歩を踏み出すきっかけや、希望の光となれば幸いです。DBTは一人ひとりのペースで取り組むものですから、どうかご自身に優しく、穏やかな気持ちで向き合ってください。